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新しい年を感じる季節、飛騨の地で御朱印集めを楽しむ

いつでも始められる・自分のペースで進められる・一生涯の趣味にできる—などの理由から、気軽な楽しみ事として定着しつつある「御朱印集め」。いろいろな御朱印と出会いたくて、出かける機会が増えてきた、などという声もよく聞かれます。
そんな御朱印の成り立ちや面白さを知れば、きっと、すぐさま出かけたくなるはず!落ち着いた心で臨みたい神社仏閣の旅には、ほかの季節よりも静けさが増す冬がぴったり。
冬のお出かけ先なら、美しい雪景色が待っている飛騨エリア(岐阜県)がおすすめです。観光がてら、同エリアの寺社をめぐる「御朱印集めの旅」を楽しんでみては? 普段は頂くことのできない“特別な御朱印”の情報にもご注目を!

本文監修:温泉寺(下呂市)

【 御朱印とは? 】

温泉寺の御朱印

寺院の本尊名や神社の名称をしたためた墨文字に、寺社ゆかりの朱色の押し印を添えた紙、「御朱印」。神仏とご縁を結んだ「参拝の証し」として、納経所(のうきょうしょ/寺院の場合。ほかにも呼称あり)や社務所(神社の場合。ほかにも呼称あり)などで頂けるものです。
ルーツは、巡礼者が書き写した経文(仏教の経典)を寺院に納めると与えられた印「朱印」。8世紀の律令時代が始まりとも、平安時代の「西国三十三所観音巡礼」が始まりともいわれています。
現代のように参拝の証しとして授与され始めたのは、庶民が巡礼を旅として楽しめるようになった江戸時代という説が有力。明治時代に入ってからは、神社でも参拝者に御朱印が授与されたようです。
現代では、専用の収集用帳面「御朱印帳」を持ち、御朱印を楽しく集めている人が多数。御朱印帳は、主に文具店などで入手できます。大きな規模の寺社では、オリジナルの御朱印帳(有料)を作っているところもあります。

飛驒一宮水無神社のオリジナル御朱印帳

飛驒一宮水無神社のオリジナル御朱印帳

〈 御朱印の一般的な読み方 〉

温泉寺(下呂市)の御朱印の場合

温泉寺の御朱印

本尊名・神社名など

寺院の場合は、本尊名やお堂の名称などが入ります。この御朱印では、ご本尊である「湯薬師」がしたためられています。神社では、神社名が中央に入ることが一般的です。

寺社にゆかりの押し印

寺院の場合は、ご本尊を梵字(古代インド発祥の文字)で表した「御宝印」や、「仏・法・僧・宝」の文字を刻んだ「三宝印」の押し印が多いです。この御朱印には、下呂温泉を発見したといわれる白鷺の絵柄が入っています。神社の場合は、神社名の印、関連するモチーフ、社紋が入ることが多いです。

寺院名

山号(寺院名の前に付く称号)が共に入る場合もあります。

寺印

寺院が用いる印章。この御朱印では「飛騨国 温泉禅寺之印 」の文字が読み取れます。

「奉拝」の文字

読みは「ほうはい」。意味は「謹んで拝み奉る」こと。
御朱印の右上に書かれることが多いです。

寺社にゆかりの押し印

「奉拝」近くの押し印は、その寺社に関連する内容が多いです。この御朱印では「中部四十九薬師霊場 第三十七番」の札所印が押されています。

参拝した年月日

書き置きやスタンプ式の御朱印では、日付が空欄になっている場合もあります。

挿絵

寺院によっては、時期に関連するものや寺院にまつわるイラストなどが入ることも。こうした絵柄に出会えるかどうかも「出先でのご縁」によるといえるでしょう。

〈 御朱印の主な種類 〉

  • 直書き …… 御朱印帳に直接書かれるもの。鮮やかに仕上がり、待ち時間も楽しみの一つ
  • 書き置き ……あらかじめ紙に手書きされているもの。参拝者が自身で貼り付ける
  • スタンプ …… 寺印や社紋含め、すべてが刻印されたもの。参拝者が自身で押す
  • 印刷 ……寺印や社紋含め、すべてが紙に刷られたもの。参拝者が自身で貼り付ける

※ 御朱印は、お守りやお札のように「神仏の分身」が宿るものではないとされています。あくまでも「参拝の証し」なので、直書きでも印刷でも、その御朱印のありがたみに変わりはありません。
どの御朱印も神社仏閣の名や印を紙面に押し頂いた、尊いものです。高い位置にしまったり、蓋つきの箱に納めたりして大切にするとよいでしょう。

〈 御朱印の代価 〉

現代では、納経をせずとも御朱印帳に“証し”を頂けますが、その際には「納経料」(寺院の場合。ほかにも呼称あり)や「初穂料」(はつほりょう/神社の場合。ほかにも呼称あり)を納めることが通例です。多くの寺社では、1枚300円ほど。特別な趣向を凝らしたものだと、それ以上の額面を納める場合も。「お気持ちによってお納めを」と託される志納金タイプもあります。

【 御朱印集めの魅力 】

墨付きも鮮やかな筆文字、魔除けの色とされる朱色の押し印——古風な文字から書き手の心が伝わってくる御朱印は、このデジタルの時代、かえって新鮮な魅力を放っています。また、書き手によって字体も変われば筆さばきも変わる“世界に一つだけの御朱印”を自分のものにできるメリットが。流麗な墨書や、由来をまとう朱色の印、意匠を凝らした御朱印帳の表紙を、芸術的な見地から味わうのも楽しいものです。
神仏との新しいご縁を求める気持ちは、その人をさまざまな土地へと連れ出します。もしかすると、御朱印集めに出かけた土地の良さ・美しさに魅了され、その地自体のファンになる喜びも味わえるかもしれません。

【 御朱印集めのマナー 】

集めることへの明確な流儀はないようですが、御朱印は神仏とのご縁を「結んだ」証しだけに、参拝後に授与をお願いするのが大前提。寺社の縁起(由来・沿革・起源)や、ご本尊・ご神体について知ることなく、あたかもスタンプラリーのように「ゲット! さあ、次!!」という集め方はしないよう、くれぐれも気をつけたいものです。

※ 混雑する寺社などでは御朱印帳を預けた後に参拝し、受け取れる場合もあり。取り間違いを避けるため、御朱印帳に氏名を記入しておくことが望ましいです。

  • 寺社への立ち居振る舞いにもご留意を。「時間を割いて書いてくださっている」との感謝を胸に、静かに待ちましょう。書き手を凝視することは、緊張を誘うのでNG。写真撮影・動画撮影なども控えましょう。授与後の会話はおおむねOKなので、後続の待機者がいない時には交流を楽しむのもよいでしょう。
  • 寺社側は御朱印を販売しているわけではありません。受付の仕方・応対の仕方もさまざまです。訪れた先の寺社によって授受の対応に違いがあることを心に留めておきましょう。
  • 御朱印の授与は、納経所・社務所の時間内にお願いしましょう。中には浄土真宗の寺院など、教義に拠って御朱印を持たないところもあるので(例外的に授与可の寺社もあり)、宗派を調べておくことも大切です。
  • 寺院と神社が混在する御朱印帳は書くのを断られることもあるようで、寺院用と神社用で分ける人も多く見られます。寺院でも日蓮宗では、ほかの宗派が入っている御朱印帳には御題目(日蓮宗が勤行時に唱える文字)の「南妙法蓮華経」ではなく、その略の「妙法」を書くことが多いため、ほかの寺院とは分けた専用の「御首題帳」を持つ人もいます。

    ※観光地の城郭でもらえる登城記念符の“御朱印”ならぬ「御城印」が入った御朱印帳は、宗教的なものではないことから、書き入れを断られる可能性が高いようです。

  • 時には法事や神事、寺社の用事などで対応不可となることも。「今回はご縁がなかった」と割り切り、改めてご縁を結びに参拝しましょう。

心得まとめ

情緒ある「冬の飛騨エリア」へ、御朱印を求めて。

冬に御朱印めぐりへ出かけるなら、この時期ならではの情緒も楽しめる地がおすすめ。雪との取り合わせが見事なシーンを醸し出す飛騨エリアでは、御朱印めぐりの旅の途中、印象深い思い出ができそうです。キンとした空気の中、背筋を伸ばし、襟を正すような心持ちで参拝へ出かけてみてはいかがでしょう。

冬の飛騨エリアは……

御朱印をスムーズに頂きやすい

御朱印をスムーズに頂きやすい

大みそかを経て新年からしばらくはにぎやかなこともありますが、冬の飛騨エリアは雰囲気が比較的ゆったりする時期。御朱印の授与を待つ長蛇の列は、ほとんどないといっても過言ではありません。
スムーズに頂きやすいのは、納経所・社務所が開くあたりの時間帯。前日入りして当地に泊まり、空気がピンと張りつめた朝から御朱印を頂きに寺社へ詣でるというのもおすすめです。

雪がもたらす静けさの中で参拝

雪がもたらす静けさの中で参拝

御朱印を頂く前の参拝で大切なのは、気持ちを静め、心を込めて祈ること。人出の少ない冬の時期は、参拝に向いているといえるでしょう。
おりしも、飛騨エリアの冬は雪が降ることが多いです。雪は、条件によっては80%以上の音を吸収するのだとか。静まり返った雪景色の中で頂いた御朱印は、帰宅後に眺めるたびに、清らかな心持ちを思い出させてくれそうです。

特別な御朱印に出会える機会も!

特別な御朱印に出会える機会も!

御朱印には、通年で授与されるもののほか、その時期や催事・イベントなどでのみ提供される特別な内容のものもあります。通常版とは異なる文言や絵柄が入ることも多く、参拝の思い出がさらに感慨深いものに。
飛騨エリアにも、特別な御朱印を提供する用意のある寺社があります。その情報をつかめたら、それはきっと「神仏のお導き」。ご縁を結びに出かけるための良いきっかけとなってくれるはずです。

日本三名泉の地・下呂で御朱印集め

日本三名泉の地・下呂で御朱印集め

日本三名泉の地・下呂で御朱印集め

江戸期の参拝に思いを馳せ、冬の飛騨路を遊び歩こう。

古来“参拝の旅”といえば、貴族が祈願のために寺社にこもる「参籠」(さんろう)や、修験者の山岳への移動が主体。街道が整備され、文化水準も向上した江戸期になると、庶民も遠くの名勝地や寺社仏閣を訪れる旅を楽しむようになりました。
御朱印集めの旅に出るなら、江戸期にならい、観光面が充実した地へ出かけてみるのはいかがでしょう。たとえば飛騨エリアなら、“美人の湯”として名高い温泉地・下呂。温泉街に点在する足湯を楽しみながらの寺社めぐりは、ほかの地ではなかなか味わえないはずです。

温泉寺

温泉寺

「下呂温泉守護 湯薬師如来」を祀る寺

下呂温泉街を眼下に望む高台に位置。その昔、白鷺に化身した薬師如来が新しい温泉の場所を知らせたという「白鷺伝説」が残っています。

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本光坊

本光坊

珍しい“浄土真宗の御朱印”がある寺

下呂の温泉街から程近い益田川沿いに位置しています。浄土真宗では例外的に御朱印を授与している、知る人ぞ知る寺院でもあります。

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泰心寺

泰心寺

平安期の名刹の末寺として地域で愛される寺

飛騨萩原(下呂市)にある古刹・禅昌寺の末寺。100年ほど前に建てられた鐘楼門は山門を兼ね、威風堂々のたたずまいを誇ります。

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かえる神社

かえる神社

いろいろな“◯◯かえる”のご利益を期待

「ゲロ、ゲロ」という鳴き声が地名の「下呂」を想起させるとして下呂温泉のマスコットにもなっている「カエル」(加恵瑠大明神)がご神体の神社です。

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飛騨高椅神社

飛騨高椅神社

料理の始祖神を三体合祀する唯一の神社

日本の料理の神様を祀ることで有名な高椅神社(栃木県)・総持寺(大阪府)・火守神社(島根県)の御祭神を合祀する神社。1カ所にこの3体を祀る神社は、全国でもここだけとか。

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飛騨の他エリアの寺社にも
足を延ばしてみませんか

飛騨高山

飛騨高山

飛騨地方の交通・経済・文化の中枢として栄えてきた高山。かつて「江戸の粋と京の雅を併せ持つ」とたたえられたほどに美しい趣を持つまちです。その情緒は、今も「古い町並」周辺に色濃く残存。素敵な雰囲気に包まれながらの散策をどうぞ。

下呂駅から特急「ひだ」号で約45〜50分、
高山駅下車

飛驒一宮水無神社

飛驒一宮水無神社

荘厳さに満ちた、飛騨国の“第一の宮”

霊峰「位山」(くらいやま)を御神体山とする飛騨国(現在の岐阜県飛騨地方)の一宮(第一の宮)、旧・国幣小社(こくへいしょうしゃ)。境内には御祭神「水無大神」をはじめ、飛騨国中の神々が祀られています。

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飛騨国分寺

飛騨国分寺

飛騨地方唯一の三重塔や大イチョウが壮観

多くの歴史的建造物があり、名刹と呼ぶにふさわしい風格が見られる寺院。飛騨地方で唯一の三重塔は、山都高山のシンボル的存在です。

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飛騨古川

飛騨古川

江戸期には町人の町として栄えた城下町。今も商家などが残る瀬戸川沿いの白壁土蔵街は、趣ある散策にぴったりです。壱之町や弐之町、三之町に残る出格子、古川独特の軒下の装飾には、飛騨の匠の技と心意気を感じることができるでしょう。

下呂駅から特急「ひだ」号で約65〜70分、
飛驒古川駅下車

気多若宮神社

気多若宮神社

アニメ映画のモデル地とされる縁結びの神社

大ヒットアニメ映画の一場面に登場したことで有名になった神社。市街地を見下ろす高台に佇み、木々に囲まれるように立つ本殿が境内の静けさを物語ります。

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林昌寺

林昌寺

飛騨高山藩主の金森家に縁の深い名刹

かつて現在の飛騨市一帯を治めた金森家ゆかりの寺。古くは飛騨国司であった姉小路家代々の菩提寺といわれ、安土桃山期の1589年、金森家が現在の場所に再建しました。

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飛騨エリアでの“御朱印旅”は
「泊まりがけ」が得策!

寺社への参拝は、落ち着いた、静かな心で臨むことが大切です。ましてや、雪がよく降る飛騨エリアの冬。帰りの時間を気にしながら恐る恐る雪道を行き、美しい雪景色の中で参拝に焦りをにじませるのは、実にもったいないことです。
昼間が短い季節の“御朱印旅”は、宿をとってゆったり過ごすのがベター。いで湯につかり、現地の美味に喜び、神仏との新たなご縁を楽しみにゆっくり休む——白い飛騨での巡礼旅は、さらに豊かな、そして忘れられないものとなるでしょう。